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2018年8月24日

この太陽のかがやき(2) 小野十三郎

 ところで、実際は、このようにあまりに近距離で、地理的条件と時間的条件が良すぎることは、それでなくともはなはだ心がけの悪いわたしのような人間には逆に作用するものと見えて、まったくこの十年というものは、わたしは大和路をおとずれたことがない。週に一回、西大寺の近くにある大学へ講義に行くので、生駒トンネルはしょっちゅう通りぬけているのだが、ときたまに、小高い丘に建っている学校の円型校舎の屋上に出て、そこから大和国原と大和をとりかこむ山々のたたずまいを望み見るくらいで、学校からすぐ近くの薬師寺、唐招提寺、秋篠寺へも、ここにくるようになってもまだ一度も歩をはこんだことがないのである。法隆寺へはもう何年になるか、いや何年などといったものではない。何十年、三十年以上もごぶさたしているかもしれない。なんだか申しわけないみたいである。わたしは生地は大阪だが、小学校時代は大和郡山でおくった。もしふるさとというものが、幼少の時の記憶ともっとも深くかかわりがあるものならば、わたしにとっては、生地の大阪よりも大和がふるさとだと云ってもよいだろう。金沢の犀川のほとりで幼少時から青年時代の初期まですごして東京に出た室生犀星は、「ふるさとは遠きにありておもうもの……」と歌った。まったくあの有名な詩の通りなんで、どうもふるさとというものは、個人のふるさとであれ、日本のふるさと、日本人の心のふるさとであれ、なにかしら、この「遠きにありておもう」というような感慨がないと、実感として存在しないような気がする。



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