2018年9月11日
ぷろむなあど(1)岩佐東一郎
ぼくは若冠十八才のみぎり、黄眠瞳人日夏耿之介先生の序文をいただいて、おぞましくも処女詩集の題名を「ぷろむなあど」と付けたが、つづいて第二詩集には、堀口大学先生の序をたまわり、書名を「祭日」と題した。
以来四十数年にわたるつたない詩生活をかえりみると、ぼくは両先生のお言葉どおりとまではいかずとも、どうやら一生をぶらぶらと「散歩」し、明るく楽しく「祭日」気分で、すごせそうである。いまや還暦を迎えようとして心の日記を回顧する次第だ。
もちろん、ぼくの半生にも、いろいろの浮沈もあったし、喜怒哀楽、吉凶禍福をこもごも経験したのである。これらは、なにもぼくのみではなく、それぞれの人々の人生と大同小異のものではあろうが……。
だが、ぼくという男は、考えてみると日常生活も、一日のうちに何時間かは散歩しないではいられないらしい。いいかえると、これが唯一の楽しみであり、健康法なのだ。すこしぐらいメランコリーの時でも、ぶらりと散歩をしてくれば、気分が一新する。