2018年10月4日
おっちょこ 二題(2) 藤原義江
さて、僕の友人からきいた話だが、ものを知らないくせに人にものを尋ねるのが嫌いという男がその友人といっしょに海外旅行をした時のこと。この種の人間は、船でも、汽車でも、ホテルでもボーイや女中に高いチップをはずみながらもバカにされがちだ。その男、航海中の船の食堂で例によってボーイの持ってきたメニューをとり、眼鏡越しにややそり身になっていった。
“ボーイ、これをもって来い”
“それは船の名前でございます”
その男、ちょっとむっとしセキばらい一つあって、
“では、これを持ってこい”
“船長の名前でございます”
結局スープばかり三種類も飲んでしまったというわけだが、こんなのははた迷惑にならないとしても次のようなのは困る。今度は僕の経験した話だ。