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2018年10月29日

捨てる(4) 佐藤東洋麿(横浜市)

 ドイツの百貨店荒らしの少女アレックスも、警察への信頼を捨てる。フォルカー・クッチャー作『ゴールド・ステイン』(酒寄進一訳)の小さなヒロインである。大きな主役はアメリカから雇われてきた殺し屋のゴールド・ステインと、ベルリン警視庁のラート警部。時代は一九三一年、同じ浮浪児の親友ベニーと万引きを終えて逃げようとしたとき、巡査に見つかる。少女は非常階段から地上に出られるが、ベニーは、必死に窓から外に逃れ両手でぶら下がる。
 しかし巡査はそれを見つけて、少年を引き上げるどころか、二、三の口論のあと硬い靴で思い切り少年の片手を踏みつぶす。片手では窃盗した獲物の重さも加わり体重を支えられなくなったベニーは、遙か下の地面に落下。この本が描くおよそ八十年前の憎悪と狂気と格差社会の悲哀は、現代と無縁ではないだろう。ちなみにこのころのデパートは全てユダヤ富裕層の経営であり、同時に崩壊家庭からの子どもホームレスもまたユダヤ系が多かったという。少女のサツへの不信感は捨てられない。



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