2018年10月31日
高 阪本越郎
冬ざれの道を歩みなつみ
道の尽きたところから
私は枯芦の原に迷いこんだ
霜柱を靴さきで蹴っている時、
朱くさやぐ枯芦の末に
初富士
銀箔の地に
何も書いてない
白扇をさかさまに立てた
つめたい風が
足もとから吹きあげているのに
笠雲をきて
傲然立ちはだかる
見上げて、いると
私は一羽の鶴になった
白い羽根をはばたくと
からだが宙に浮き
「高!」と一声あとにのこして
無尽の銀箔の空へ
舞いあがった