2018年11月2日
桐の花 阪本越郎
丘から汗みずくになって下りると
麓のとある農家をみつけた
麦畑の中から私たちは交互に声をかけたが
誰も応えてくれない
青いスダレの向うに落着いた座敷がみえるが
猫一匹いない
私たちは裏にまわると
ポンプを音たててこいだ
そこにあったコップで受けた透明な水を
私は唇に運ぶために仰向いた
すると
傍の幹の高い梢のあたり
紫色のキラキラする眼にぶつかった
何だ あんなところから
ひっそりと見下ろしているなんて!