2018年11月12日
当麻寺(1) 藤枝静男
私の住んでいる浜松の美術鑑賞旅行で連休の二日間をあちこち引きまわしてもらったのでそのことを書いてみる。
はじめに訪問した奈良郊外の大和文華館は、環境もよく建物もゆったりとしていて気持ちよかった。高さ30糎ばかりの見事な唐三彩の美人備があった。たったいま窯からひき出されたと思うばかりの鮮やかさで、ふっくらとした両頬に桃色の紅をはき、その上に梅の花の形に濃い白粉を押している。誰かの書いたものでこういう飾りは紙を切り抜いて貼りつけることもあるということを読んだ覚えがあったが、いづれにしても如何にも可愛らしく豊かな感じで、楽しい印象をうけた。そしてそれから行くことになっている当麻寺からの聯想で自然に中将姫のことを思いだした。ちょうどこの唐人形のつくられた時代と当麻寺のいわゆる蓮糸の浄土曼陀羅の製作年代とが同じくらいになる。