2018年11月16日
日記から見た伊東静雄(1) 小高根二郎
私は今まで書簡の中に見た、いささか取り澄ました伊東の詩人像の制作に努めてきたが、今後は日記の中に正体をさらしている彼の人間像の究明に全力をあげようと思っている。
昭和十三年九月二日の日記に、次のような日記執筆に対する態度というか心構えが書いてあるが、恭順な教職員には想像のできぬふてぶてしさが、そこに表明されている。
「胸をはり、おだやかに、微笑し、闊達に、感覚的に、時に剃刀の如く、悪婆のごとく、
無頼漢のごとく。博突打のごとく、わにの尾(蛟、みつち)もて生き物をうつごとく、
おのづから筆とり、しづかに己れと語るは楽しいかな」