2018年11月22日
日記から見た伊東静雄(5) 小高根二郎
昨昭和三九年の晩春の或る日に、日記に非常によく姓が出る旧住中二〇期虎児気組の有志が私のために集ってくれた。伊東研究の資料を提供しようという有難い志からである。世話人の中川邦夫氏の斡旋で十人の級友が集ってくれたが、奈良在住の中川氏は来阪する電車の中で前述した奈良学芸大の家森氏に出会い、日記中にしゃアしゃア……と臆面もなく記録されている禁忌行為を家森氏はなんとかならんかなア……と頭を傾けた由、初体面の私にまっさきに語りだしたものである。そして中川氏もまた、伊東の死の十日前に林檎を贈与したことを、最後の贈与者となった事実を誇らしげに語りだしたものである。