2018年11月27日
おわりに-2 (最終回) 佐野靖之 「隠れぜんそく」-おわりに 発売元 株式会社 幻冬舎より
とはいえ、その3年を過ぎて症状が安定しても、治療を中心とした自己管理を怠ってはいけません。発作が起こらないといっても、気管支の炎症は常に起こっているのです。ぜんそく患者に専門医として私が言える最良の治療法は「症状が安定しているときこそ、きちんと治療をして、さらに安定した状態を維持する」ことです。
ぜんそく治療の現場では、これまで行われてきた「起こってしまった発作を一時的に鎮める治療ではなく、「発作の起こっていないときも気道の炎症を鎮めて、発作が起きないようにする治療」へと医療のかじ取りが変わってきています。ぜんそくは、内臓が壊れたり、がん細胞に蝕まれるという病とは違って、発作が起きなけれぼ健常者と変わらない生活が送れる病気です。辛抱強く適切に吸入ステロイド薬を続けているうちに、発作や症状がまったく出なくなる患者も多く、残りの大部分も、日常生活は普通に送れます。それにより患者のQOLも格段にアップするはずです。また、重症の患者でも、今後、もっと効力があり継続しやすい薬が開発され、時間がかかっても寛解を目指せると思われます。
繰り返しになりますが「症状が安定しているときこそ、きちんと治療を続ける」ことを肝に銘じて、私たちとともに「寛解」=ゴールを目指しましょう。
2016年12月吉日
佐野靖之
医療法人社団アズマ会佐野虎ノ門クリニック院長。1970年東京大学医学部卒業。米国ネブラスカ州クレイトン大学アレルギー病センター勤務、同愛記念病院アレルギー呼吸器科部長などを経て、2006年に佐野虎ノ門クリニックと東京アレルギー喘息研究所を開設。2010年には、ベストドクターズ社が選ぶ、全世界の医師のうち0.6%しかいないベストドクターに選出された。押しも押されもせぬ、ぜんそく治療の権威。
既著に『名医の図解ぜんそくに克つ生活読本』(主婦と生活社)などがある。