2018年11月27日
日記から見た伊東静雄(7) 小高根二郎
もっともこの三氏の場合と反対に、落第の心配から金品をもって訪問してるのも記録されてある。昭和一九年三月一〇日と一一日の日記である。
「**、**、留守中に来た由。落第を心配してのことらしい。**、海苔。**、固形スープ
をくれる。」
「朝の間うつくしいぼたん雪、夕方から氷雨になる。自宅採点日。然し大方はひるねして
暮す。
夕方これも落第を心配して**来る。餅、お金(二十円)をおいてゆく。お金みつけられて、
困り切つてゐたので、だまつておいた。」
**と姓を伏せたのは花子未亡人の希望による。この記録を見ると一点加算の可能性は十分にある。まさに「悪婆のごとく、無頼漢のごとく」悪を行為する猛々しさで、常人ならば記録を忌避するところを、アイロニイとして敢て書いたものと想像される。