2018年12月3日
汗のいろいろ、ひや汗、香ばしい汗(2) 斎藤玉男
次はひや汗である。ひや汗は大体どこから主として出るのであろうか。「冷汗背を沾ほす」と言うが、元来背中は汗線の多いケ所であるので、ひや汗が特に背中に集中するかどうか疑わしい。むしろ「ひや汗が腋の下から」と言う方が真に近いかも知れぬ。「手に汗を握る」時の汗は汗の性質が少々違うが、精神の緊張を伴う点はひや汗と共通するかも知れぬ。ともに普通の生理的汗とは成立を異にする心理的汗である。性質上は交感神経由来のものである。ひや汗がその名のように生理的汗に比べて低温であるかどうか。通例それは失敗が露現した時や問い詰められて言い抜けに究した時など、困惑の状況下に湧く汗なので、絶対温度は兎に角、心理的に低温にあるとは考えられる。「掌に握られる汗」の温度は、その時の状況によって冷温一様でないであろう。