2018年12月4日
汗のいろいろ、ひや汗、香ばしい汗(3) 斎藤玉男
寒中でも食事時に限って鼻の尖や額の生え際にポッポと汗を流す習癖の人がある。これはその場所の交感神経支配が食事との連想についてだけ敏感なのであって、一般の神経性募麻疹と同格と考えてよい。
中国の漢時代の記録に「西域より汗血の馬を朝貢す」とある。つまり精桿な馬で、その汗が血色を帯びた意味であろう。河馬は生理的に色の付いた汗を出すので知られて居るが、まさかに古生代に河馬と馬との交配が自然に行われた訳でもあるまい。さてその有色の汗の成分であるが、血の成分そのままが汗に出ることは考え難いとして、馬のひどい過労の場合馬に特有な尿の成分である馬尿酸などが、過量に汗に出て着色材料となることはあるかも知れない。キサンチンやヒポキサンチンなら淡い黄色となり得よう。馬尿酸で思い出したが、かなり以前にソヴェトの或る学者が或る種の脳の病者の汗の中に馬尿酸が殖えて居る報告を出して居る。馬尿酸の検出はそれが微量でもかなり鋭敏に出来るのである。