2018年12月28日
大き画布(3) 歌集 大き画布 西川敏子より
飢餓の児の残像消えずアジアなる日本は今年も豊作を告ぐ
重文の大般若経納めある神社の木立に群るる椋鳥
見てゐしは狛犬なりき戦の日祈り征きたる兵の泪を
町の静寂煽りて過ぎしつむじ風ある信金の取り付け騒ぎも
地表すべて蔽はむほどの夕焼けに染まりて佇てる辻の地蔵尊
陽のかしぐ秋の野道を類型の貌して児らは塾にいそげる
秋風に誘はれて来し野の夕べ手をひく幼などこにもおらぬ
陽を吸ひて大き画布あり黒き影曳きて歩めるわれを画くため