2019年1月29日
伊豆 旅・より 歌集 大き画布 西川敏子より
憂国の血を渡らせて士が築きし溶鉱炉冷えて長き歳月
繋がれて踏鞴を踏める囚徒らの眸に写るは伊豆の夕焼
反射炉が原子炉となり防衛とふ名にて戦となるを怖るる
(唐人お吉)
開国の贄とて下田の史に残る女の墓にもみじ葉は散る
太陽に砲口むくるさながらに廃炉は今も威容保てり
黒船の沖に泊てたる過去を反芻しつつ岸をうつ波
陽のいづる哀しみもあれ剥落のなまこの壁と白き朝月
寛容に金波銀波を踊らせて海を統ぶるときらめく夕陽