2019年2月13日
残照 歌集 大き画布 西川敏子より
軒すだれ透きて入りくる黄昏は紫苑色なりわが夏衣
平等に神より給ふ明け暮れの流れの中の長き残照
この瞬間地球のいづこか砲声の轟きゐるや赤し 夕雲
古りしソファー無人ベンチのごとく在りゆふべの茜わずかに及ぶ
悔多き一日の終り足跡を消すがに濃ゆき夕闇いたる
憂ひごと煩ふことに身構へて解き放ちやる今日の落日
迷ひ道あゆむ行く手に巨大なる夕陽がありて我を威嚇す
微笑を絶やすことなきモナリザの掌紋なき手かるく組まるる