2019年2月19日
秋ふかむ 歌集 大き画布 西川敏子より
秋風が運びて来しは何ならむ庭の果実は俄に艶めく
黄葉の早き一樹の照り翳り秋深む日の心にも似て
赤とんぼ白き秋蝶児等が追ふ日曜農婦われの傍へに
秋祭り近づく夜は室深く麹ましろく甘く匂へり
粧へるばかりに赤き鳩の足とびゆけり秋の風伴ひて
後頭部ばかり並びてぐらぐらと列車は長きトンネルに入る
赤字線の増発またも据え置かれ秋陽あまねくそそぐ無人駅
石蕗の花陰あたり仔を呼ばふ猫の声して深みゆく秋