2019年3月29日
天命 鎮魂(たましずめ) 歌集 大き画布 西川敏子より
青春は灰色なりきひたすらに平和を願ふ我も母なる
セーラー服モンペに替へて弾丸つくる狂ひし者よりの命なる日々を
空裂きて落つる爆弾地を裂けば音たてて神國の亡びゆく時
竹槍で勝つなど思ふ錯覚も醒むれば傷痕あまりに深し
真珠湾奇襲の日より憂ひもつ海寄せかへす白き泡沫
真珠湾やむなしと云へずひたすらに悔悟ひしひしと半世紀経し
焼夷弾街焼きつくせし記憶あり火玉のごとき夕陽が落つる
炸裂音耳より消えず生と死を分ちし我と友の天命
被害者は加害者なりしか戦ひの為と一途に兵器造りし
ひとたびは勝利に酔ひし少女期のネガを焼きたり落葉と共に