2019年7月4日
偶感(2) 結城哀草果
その芭蕉が本合海から舟に乗って、最上川を下り庄内に出て、六月三日に羽黒山に登ったのであるが、舟が最上川を白糸の滝をまともにするあたりまで下ったころ、河流のいかにも早いのを目撃して、
五月雨を集めて早し最上川
と訂正したものと想像される。流石の芭蕉も舟着場の大石田では、最上川を眺めて「五月雨を集めて涼し」であったが、白糸の滝あたりまで下った時、日本三急流の一つである最上川を、ぢかに見詰めて「五月雨を集めて早し」と訂正した。この訂正した句が「奥の細道」に記載されてゐるが、かくのごとく芭蕉の名句はすべて、芭蕉の足と眼とが土台となって、生れた作品である。