2019年8月7日
膕の美と腓の美(2) 斎藤玉男
近古から踵の美には多少の注意が向けられた。尤も厳義では踵とはアキレス腱の跟骨への付着部を言うのだが、通例腱が腓腸から次第に細まって行くあたりの彎曲部をも含めて言うらしい。近代歌では幾つか「円き踵」と言う表現に出逢う。併し実感から言うと踵は到底脇の敵ではない。
そこで膕の美は何と言っても若さの象徴としてであるが、とり別け少年のそれに極印を打つ。童女のは屡しば脂肪過剰の憾がある。一面人体美の衰うえもテキメンにここから兆して来る。中年の両性ともに脂肪の削げは頬よりも頚筋よりも先づここを襲う。
唐の楊貴妃は美容を保つために海南島から黎枝の実を逓伝で取り寄せて嗜んだと言う。これが腰の美の保続に効があるかどうか、未だ考え得ない。臓器の機能から言えば、膵と副腎の調整が腫の美にとって支配的であると言えよう。