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2019年8月21日

小宮豊隆先生(青春の回想の一部)(6) 津村秀夫

 水曜日の私宅の面会日を、学生たちは水曜会と称して(漱石山房の木曜会に対して)、いつも十数名が先生のぐるりに集ったが、美学科の学生も、英文や国文学科の生徒も来た。私は先生に特別に愛されて、同じ仙台にいながら長い手紙を先生に出したりした。むろん恋愛問題で相談に行ったこともある。
 大学の講議に出ない口も水曜会のある、仙台市北二番丁六八の先生のお宅へは必ず出向いた。深更一時頃まで語るのが常であった。
 私は先生から第一次大戦後のベルリンやパリのこと、ストリンドベリイはむろんのこと、芭蕉や近松のこと、明治の劇壇の名優たちの話から西洋美術のはなし、安井曽太郎や中村吉右衛門の芸術のことなども聞いた。が、最も心を動かされたのは漱石山房をめぐる明治時代の空気である。山房につどう漱石門の寅彦、三重吉、草平、哲郎、盤一郎(野上)、虚子、能成、次郎(阿部)などから、のちの時代のお弟子の竜之介や久米正雄などの東大生に至るまで。



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