2019年9月13日
アルベール・カミユ 「結婚」 柏倉康夫訳 ティパサでの結婚(8)
ティパサでの結婚(8)
昼少し前、わたしたちは廃嘘を通って、港の端の小さなカフェに戻った。太陽と色彩のシンバルが鳴り響く頭にとっては、影にみちた部屋や、緑色の冷えたペパーミントが入った大きなグラスほど、爽やかな歓待はない! 外は、海と埃っぽい焼けついた道路。テーブルの前に座って、しばたく捷毛のあいだに、白熱の空の多彩な眩惑を捉えようとする。顔は汗でぬれているが、軽いシャツを着た身体はすがすがしく、わたしたちはみな、世界と結婚した幸福な]日の疲労をさらけ出す。