2019年9月18日
アルベール・カミユ 「結婚」 柏倉康夫訳 ティパサでの結婚(10)
ティパサでの結婚(10)
わたしは一日以上ティパサに留まったことは決してない。ある風景を長く見すぎたという瞬間がいつもやってくる。もっとも、風景を十分に見たというには長い時間が必要だ。山々、空、海は人間の顔と同じで、見るというより凝視していると、そのつまらなさや輝かしさを発見するものだ.だが、どの顔も、表情豊かであるには、絶えずある種の更新を必要とする.人はすぐ飽きてしまうと嘆くが、本当は単に忘れてしまうだけのことで、世界が新しく見えることに感嘆すべきなのだ。