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2019年10月8日

アルジェの夏(1)アルベール・カミユ 柏倉康夫訳

 人びとが一つの街と分かつ愛、多くの場合、それは秘められた愛だ。パリやプラハのような都市、あるいはフィレンツェでさえ、都市は自らの上で閉じられ、固有の世界を限っている。(2)しかしアルジェは、海に面した他の街と同様に、口か傷口のように空に向かって開かれている。アルジェで人が愛することの出来るのは、それによって皆が生きているもの、すなわち、どの曲がり角からでも見える海、太陽の一種の重み、人種の美しさだ。そしていつものように、あの破廉恥さとあの饗応のなかで、ごくひそやかな香りと出会う。パリでは、人は空間と羽ばたきに郷愁を抱くことがある。ここでは、少なくとも、男は十分満足し、欲望を保証されているから、自分の豊かさを控えることができる。


訳注
(1)ジャック・ウルゴンは一九三五年当時、アルジェ大学文学部教授で、同人誌「リヴァージュ」の編集委員の一人だった。学生のカミュは影響をうけた。



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