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2019年10月10日

アルジェの夏(3)アルベール・カミユ 柏倉康夫訳

 人びとはここでは、青春であるあいだ、彼らの美しさに見合う生を見いだす。その後は、下降と忘却だ。彼らは肉体に賭けたのだが、やがてそれは失われることも分かっている。アルジェでは、若くて溌刺とした者には、すべてが避難場所で、勝利の口実だ。港、太陽、真っ赤な頬、海に向ったテラスの白さ、花、スタジアム、新鮮な脚をした娘たち。しかし青春を失った者には、すがりつくものは何もなく、憂鬱が自らを救いだせる場所はどこにもない。しかし他所では、イタリアのテラス、ヨーロッパの僧院、プロバンスの丘の姿といった、人間が己の人間性から逃れて、甘美な想いで、自らを解放できる場所が沢山ある。だがここでは、すべてが孤独と若者たちの血を要求している。死にゆくゲーテは、「もっと光を」といい、それは歴史的言葉となった。ベルクール(3)やパブ=エル=ウエドでは、カフェの奥に座った老人たちが、髪をテカテカにした若者たちの自慢話に耳をかたむける。

訳注
(3)ベルクール、かつてカミュが住んでいたアルジェの下町。



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