2019年10月21日
アルジェの夏(9)アルベール・カミユ 柏倉康夫訳
アルジェの街の映画館では、ミントのドロップをよく売っていて、そこには恋が生まれるのに必要なすべてが、赤い文字で刻まれている。(一)問い。〈あなたはいつ結婚してくれるの?〉、〈わたしを愛している?〉(二)答え。〈気が変になるほど〉、〈春には〉、といった具合である。お膳立てをした上で、それを隣の娘に渡すと、娘は同じように答えるか、さもなければ冗談にまぎらせてしまう。ベルクールでは、この結果、結婚した例も見た。人生全体がミントのドロップの一度の交換にかかっているのだ。そしてこれは、この国の人たちの子どもっぽさを物語っている。