共立荻野病院コラム詳細
TOP > 共立荻野病院コラム一覧 > 砂漠(11) アルベール・カミユ 柏倉康夫訳
  • 診療科目一覧
  • 内科
  • 胃腸科
  • リウマチ・膠原病科
  • アレルギー科
  • リハビリテーション科
診療時間
  • 外来診療時間

    休診日
    月〜金 午前9:00〜午後12:00
    午後3:00〜午後6:00
    土・日・祝日・年末年始・夏季
    (3日間)
  • デイケア利用時間

    定休日
    月〜土 午前9:00〜午後4:00
    日曜・年末年始
  • 院内のご案内
  • 医師紹介
  • 共立荻野病院デイケアセンターフラミンゴ
  • 住宅型有料老人ホーム プメハナ

2019年11月21日

砂漠(11) アルベール・カミユ 柏倉康夫訳

 何百万という目がこの景色を眺めたのを、わたしは知っていた。それは空の最初の微笑のようだった。そしてそれは言葉の深い意味で、わたしを自分の外に連れ出してくれたのだ。わたしの愛と、石の美しい叫びがなければ、すべては虚しいとわたしは確信した。世界は美しい。それ無くしては、何の救いもない。そのことが辛抱強く教えてくれた偉大な真実とは、精神など何ものでもなく、心もまたそうだということだった。そして、太陽に熱せられた石や開けた空のせいで、高くなったように見える糸杉こそが《正しい》という意味が、唯一この宇宙を画することを教えてくれた。つまりそれは、人間のいない自然である。この世界はわたしを無にする。これは徹底的になされる。世界は怒りもなく、わたしを否定する。フィレンツェの野に落ちる夕暮のなかで、わたしは一つの叡智への道をたどって行った。目に涙は浮かばず、わたしを満たしてくれた詩の激しい鳴咽のせいで、わたしが世界の真実を忘れなかったとしても、すでに一切は征服されてしまっていたのだった。



共立荻野病院コラム一覧へ戻る