2019年12月4日
語りかける(6) 佐藤東洋麿
生活費が足りなくてすぐ返すつもりで町の金貸しから借りた十万円が、あっという間に十倍になってその取り立てが恐怖の悪党じみ、蒼ざめた依頼人が駆け込んでくる。
債権者のひとりは激昂して卓上の重い灰皿を関さんの胸に投げつけたという。彼の左胸の内ポケットに硬貨がぎっしり詰まった財布が入れてあるのは、この種の粗暴行為から身を守るためだった。豪胆だったなぁ、あなたは。私より二つ歳下なのに。臆病で軟弱な私にとって(口にこそ出さなかったけれど)守護神の風情があった。