2019年12月18日
日々雑感 第九話 及部十寸保
第九話 「再び卓球の話をしよう」
東京五輪の迫る中で、ブダペストで世界卓球選手権大会が行われた。期待に反して、結果は中国に負け、両国の差がかえって開いた。その上、韓国にも引けをとった。何故、こんなことが起きるのだ。私は腹が立って後半戦を見なかった。
卓球関係の本の中に答えがないかとさがした。手元にあったのは、「豊橋卓球協会結成六〇周年記念誌」であった。桜丘高校卓球部監督松井彊先生らが執筆編集した冊子である。その中に、一枚の紙が挟まれていた。それには、一九六五年スロベニアのリュブリャナでひらかれた世界大会で優勝した深津尚子選手のことを評した荻村伊智朗氏の文章が載っていた。
「おととし、世界選手権大会の女子個人戦の決勝で、中国・林慧卿と対戦した彼女は、 ーポイントを奪うのに、なんと百七十回も粘って、相手のミスを誘う持久戦をやった。スマッシュが得意でなかったためだが、これには粘り強い外国選手も驚きの眼をみはったものだ。」
「みかけはノンキそうだけれども(略)人間的にもひとまわり大きく成長したように思われる。」
ボールやラケットの改良、選手の技術の向上によって、日本の卓球界は躍進した。さらに、張本選手や伊藤美誠選手のように、勢いのある球が打てる選手が登場してきた。チキータといわれる、これまた凄いカーブ球も彼らは打てる。しかし、卓球の難しさはこれからだ。
スマッシュは凄いが、サーブのミスが多い。ミスのない卓球をするための集中力、粘り強さが足りない。また、コーチからの注意を受けている場面をテレビで見ていると、若い選手らは、素直さが足らないように思う。勝ちへの焦りからか、 闘志が空回りして話が聞けていないように思う。つまり、まだ人間的に幼い。今後、いろいろなことを経験して人間的に成長すれば、日本の卓球界の将来は明るいものとなるだろう。
深津選手は、その後、高松で、老舗料亭の女将として活躍中と、荻村氏の文章の添え書きに書かれていた。私は、深津選手が在籍した時、男子部の教師であった。彼女が桜丘の同窓生であることを誇りに思う。
2019年4月29日 記す