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2019年12月26日

日々雑感 第十五話 及部十寸保

第十五話 「感想記5『灯す会』総会に久しぶりに出席して」
 二〇〇五年七月二十五日の朗読劇公演に関して第十四話をまとめた後、私は無性に被爆者の方々や平和の火に会いたくなった。そこで、「灯す会」総会に参加するよう、熱心に誘ってくださった小野田洋子さんに介助をお願いした上で、小南会長に、「豊橋に原爆の火を灯し続ける会」の総会に出席しますと返事をした。
 六月九日十二時半。会場の桜丘高校に到着した。我が家まで迎えに来てくださった小野田洋子さんが、「開会まで少し時間があるので、寄りたいところがある。」とおつしゃった。唱嵯には、どこかわからなかった。一号館一号室に入った。 目に飛び込んできたのは、天を突く石の塔だった。その塔の奥には、あの英心園。青々として美しい。英数科生徒の日々の清掃活動によって、この美しさが保たれていると小野田さんが説明してくれた。ここには、プレートに「生命の樹」と書かれた一本のカシの木がある。「私は生きんとする生命に取り囲まれた、生きんとする生命である。」シュヴァイツァー 博士の言葉である。そして、その奥に「ここのつの会」(卒業生・父母の会代表 柳田千寿子さん)が掘った池がある。 その池に立つブロンズ像。「梨明」と題された青年像は、完成記念に建てられた。私はその台座に「いのち之碑」と書いた。また、この英心園の入りロに、豊川海軍工廠の爆撃で亡くなった女子生徒三十六人、引率教師一人の死を悼む平和祈願の「平和の女神像」が立っている。この庭園のすべてが、いのちの尊さを歌い上げている。庭の南側には、清心館と記念会堂が建っている。この二つの建物が、学園の歴史を物語る。平和の塔を中心にして、庭園と建造物の統一美を表現している。小野田さんが見せたかったのは、この風景美だろう。
 清心館は、旧陸軍兵舎で、一九七九年十月、市新庁舎建築の折、移築された。ここは、華道・茶道など女子部の部活動に活用されているが、男子部も、学習合宿や座禅会など、精神修養の場として使用した。忘れられないのは、被爆者協議会の殿原好枝理事長を講師として招いたときのことである。殿原さんは、犬山から、参加者全員分のお寿司を自ら作って持ってきてくださった。殿原さんは、犬山の街を歩くと、「殿原さんご苦労様」といつも声がかかる人だった。八十歳で他界された。私も田村前会長と二人、お別れの会に出席した。愛知の反核運動が生んだ最高の女性だった。春日井には、 水野秋恵さんがいらっしやる。父母懇で活躍された。この日の「灯す会」総会の来賓名簿にお名前があったので、お会いできるかと期待したが、平和行進の名古屋集中の日で、叶わなかった。残念であった。ご健康をお祈りしたいと思う。
 記念会堂は、学園の建学の精神の象徴である。一九三六年十一月に完成。西洋風の白亜の外壁が、英心園の緑と調和している。かつては、一日三回美しい音色の鐘が鳴った。桜丘が民主化され、ここは、父母の会父母懇の定例会議場となり、 父母提携の教育づくりの本丸となった。
 小野田さんと、一号館一号室の窓の外の風景を楽しみ、思い出に浸った後、 一時半から、総会に出席した。冒頭は、一一年生の生徒から、桜丘高校沖縄修学旅行の報告をうけた。昭和十九年四月、戦端が開かれた。大激戦となる。十六日間で、両軍合わせて十万人(他説では二十万とも言われる)の戦死者を出した。戦場は、琉球の石灰岩台地に点在する自然洞窟、 ガマであった。修学旅行団が見学したのは、轟の壕、千人塚、糸数の壕、山城本部壕、白梅の壕、新城分院、健児の塔など。すべてが戦争の悲惨さを物語る。
 次に、小南会長から、活動方針として、「平和の塔」「灯す会」三十周年記念行事の具体的な提案があった。安間先生は、 沢田昭二先生夫人のご逝去を報告された。自由発言で、菖屋家隆氏が、湖西から蒲郡(の平和行進を見事完歩されたと聞いた。氏は私と同じ八十六歳。お元気で羨ましい。田村前会長は、お体が快復されて、平和行進をご自宅前で見送られたそうだ。行進に参加されていた人々が感動したそうだ。白井あやさんは、次世代につなぐために、若者の参加をどう促したらよいか、ご自分の考えを述べられた。三河市民生協八木前理事長にもお会いできて嬉しかった。桜丘高校の原田先生、 梅村先生、杜若高校の紀平先生とも歓談できた。長く欠席したにもかかわらず、みなさんが私を温かく迎えてくださって、 ありがたかった。閉会後、光が明るさを増した平和の塔の前で記念撮影をした。

2019年6月20日 記す



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