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2021年2月6日

中高年の健康戦略(27) 「スピリチュアリティ(その3)」 富士通川崎病院 顧問 行山康

 健康の第4の要件ともいえるスピリチュアリティということについて書いております。
 前回、鏡は生物としては衰退の時期に入って老いた自分を映し出すが、其れを見ている自分はもう少し、生き生きとしている。鏡の中の自分を受け入れきれない。この乖離、ギャップをどう乗り越えるかというところまで話をすすめました。

 それならば鏡のことなど忘れて自分のペースを守るというのが一つの方法です。しわが増え、白髪が増えたなんとはなしに精彩を欠いた自分を忘れよう、自分の生き方を貫いてゆこう、夢と希望をふくらませて生きてゆこうというのが一つの解決策です。夢とか希望をもつことは大変、快いことです。
 しかししばしば腰が痛む、眼が疲れてしょぼしょぼする、身体が重い、息切れがするなど外見のことを忘れても体の中から鏡に映った自分が呼び覚まされます。或は周りを見ると高齢化社会で同世代も多くみかけるが、第一線で活躍している多くは若者である、考え方もしゃべりかたも違い、おのずと自分の年の違いを意識させられます。
 冷静に客観的にみれば違いは明らかだ、やはり鏡に映る自分こそが真実の自分で、普段感じている生き生きとした生活感覚は幻影、幻でなかろうか、鏡の中にこそ現在の自分を正確に映し出している真実があるのではなかろうかと引き戻されてしまいます。

 もう少し身近な例でいうと健康診断のデータのことがあります。健康診断のデータのことで
 糖尿病の疑いがあったり、心電図に異常があるので注意しろと指示されている。しかし、自覚症状は全くないので気にしない、無視するに限る、この生き生きと過ごしている自分こそ真実で、鏡に映る自分の姿が虚像であるように、このデータは自分ではない、自分の虚像に過ぎないと思い込むことが自分のペースを守る一つの方法です。
 医師とか保健師などの医療担当者は糖尿病の疑いとか心電図の異常を真実と考えてしきりと精密検査とか治療をすすめるが、これは俺の虚像に振り回されて無駄なことをしていることになる、変な世の中だ、ということになり、世の中のかなりな部分は虚像で動いているのではないかなどという社会認識にまで到達してしまいます。
 自分が感じている自分が真実なのか、鏡とか紙に投影されている自分に真実があるのかという問題は簡単に解決する問題ではありません。むしろその間をいったりきたりするのが、我々、凡人の恒ではないでしょうか。

 人が成長する過程は生まれながらに備わった五感がおおいなる助けとなります。また、親、兄弟、友達、学校などでおしえられることで社会的感性を養います。
 すなわちうまれたときから客観的世界の庇護を受けて育ってきているので、成長してどのような主観的世界をもとうとも、客観的世界に一定の権利を与えているのです。鏡に映し出される自分には全面的とは言えないまでも一定の真実があると考えざるをえないのです。しかしそれでもぬぐいきれない違和感は残るとおもいます。
 スピリチュアリティはこうした客観的な自分のすがたと主観的な自分の間での迷いを統合しバランスをとる心の働きです。人間の心の中に存在する根源的二元性を統合しているのがスピリチュアリティの働きです。スピリチュアリティの働が不安定であると自分自身の体感がオールマイティになったり、「客観的事真実」によって心を揺さぶられたりします。
 それではスピリチュアリティを高めて、老後をより豊かにする方法はあるのでしょうか。
 そうした方策を論ずる前に、かくにんしておきたいことは私が診療で接する富士通のOBのほとんどのかたは申し分のないスピリチュアリティで過ごしておられるということです。ここでスピリチュアリティを取り上げたのは健康にはこのような問題もあるということを知っておいてほしいという程度のことなのです。

 スピリチュアリティをさらに高めてゆこうと関心をお持ちのかたに、2,3のヒントを述べておきたいとおもいます。それは例えば、茶道、柔道、武道などといわれる日本古来からの「○○道」と道がつくものにヒントがあります。道に入り道を究めようとすることがスピリチュアリティを高めることにつながります。
 ヨーガ、座禅などもスピリチュアリティを高める手段としてすすめられます。こうした東洋の民族で発展してきた修養の方法が欧米で広まっていることにはいろいろと理由は考えられます。一つの理由は主観的存在と客観的存在を明確に分けて、どちらかというと客観的存在に重きを置いた結果、現代の欧米を中心とした技術文明、科学文明が発達した。しかし、現代の世界の諸問題、例えば地球環境の悪化の問題ひとつとってもこの発展の仕方には限界と歪みを生じているということが認識されるようになったためでしょうか。
 宗教に関してはスピリチュアリティを高めるものとして評価されていますが、それ以上のことはここではふれません。ただ信ずる気持ちというのは大切だとということは述べておきましょう。
 もともと日本では「仏道に入る」といういいかたがあるように、宗教がスピリチュアリテを高めることを意識していた側面があります。
 というわけでスピリチュアリティに関する話題を終えますが、よいスピリチュアリティをもって心身の健康を保つことに役立てて下されば、幸いに思います。



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