共立荻野病院コラム詳細
TOP > 共立荻野病院コラム一覧 > 中高年の健康戦略(36) 「からだの癖(くせ)」富士通川崎病院 顧問 行山康
  • 診療科目一覧
  • 内科
  • 胃腸科
  • リウマチ・膠原病科
  • アレルギー科
  • リハビリテーション科
診療時間
  • 外来診療時間

    休診日
    月〜金 午前9:00〜午後12:00
    午後3:00〜午後6:00
    土・日・祝日・年末年始・夏季
    (3日間)
  • デイケア利用時間

    定休日
    月〜土 午前9:00〜午後4:00
    日曜・年末年始
  • 院内のご案内
  • 医師紹介
  • 共立荻野病院デイケアセンターフラミンゴ
  • 住宅型有料老人ホーム プメハナ

2021年5月27日

中高年の健康戦略(36) 「からだの癖(くせ)」富士通川崎病院 顧問 行山康

 ひとは「なくて七癖」などと申しますが、というと落語の語り出しのようで恐縮ですが、今回は「からだの癖」ということについて考えてみましょう。
 「からだの癖」とは医学、医療上の定義があるわけではありません。しかし、ほんの一瞬だけ感じる症状とか、意識にのぼることもあるが、すぐ忘れてしまい、簡単に思い出せないからだの不調だとか、ある時期には必ず現れる症状といったことを想定してみます。
自分では些細な症状と思っているはずです。その中でもいつもきまってあらわれる身体の異常を自分の「からだの癖」としましょう。

 高血圧とか糖尿病で通院しているかたに「いかがですか」と問うと、大概は変わりありませんとか特に変わったことはありませんとお答えになります。このなかにはまったく不調感ゼロのかたもおれば、あちこち痛かったり、こったり、完全ではないのだが年だからこの程度はいたしかたない、からだのくせみたいなものだからと、取り立てて話すこともないという方もおります。
 特にかわりないといっても年齢的にはからだのこわばり、足腰の痛み、頭痛、腹痛、食思不振、目のしょぼつき、流涙、口内の苦味、口の乾き、耳鳴り、肩こり、手足の引きつり(けいれん)、ふらつき、めまいなど様々な症状が、頻繁とはいえないまでもあったことでしょう。しかし、一日と続くこともなく、ある場合はほんの瞬間的な症状のことなので心にとどめるほどのこともなく、生活の中で記憶からうすれてしまうようなことだったのでしょう。
 自分の場合をいうと、3月から9月の間に不調をきたすことが多いのです。まず、花粉症。これは立派な病気ですが、はっきりと発病する前は毎年、この時期は体調不良が続きました。5月ごろに高熱を出して寝込んだことが2回ほどあります。6月には両下肢に虫刺されが悪化したような湿疹ができるのです。夏は20年の間に3回ほど咳が長く続き、いつまでも治まらない状態がありました。すなわち自分の体の癖の一端は3月から9月の時期に何かと不調をきたしやすいということです。4,5年前に、突然背中が酷く痛み1週間ほどは普通に座っているのもつらい状態がありました。整形外科で診察を受けたところ背筋の捻挫ということが判明しました。筋肉トレーニングのし過ぎとのことでした。これも5月のある朝に突然出現した症状です。6月にはいつも不眠症に苦しみ、眠れない夜を過ごします。

 自分のからだの癖をしっておくことは時に有用です。ある中年の男性ですが、頭痛、のどが痛いという感冒症状で受診なされました。体温は平熱で、咽頭はやや赤く腫れており、扁桃腺はもともと大きいようです。そのかたは、自分は風邪をひいてのどが痛いときは必ず、高い熱を出してしまい、2,3日は休まねばならなくなる、抗生剤を服用すると熱が下がるので、早めに抗生剤を服用したいといいます。
 現在のところ、喉の腫れも軽く、顎、頸部のリンパ節の腫れ、圧痛みもなく、熱もでていない、通常は対症療法で安静気味に過ごすようにお話して診察を終えるところです。しかし、自分のからだの癖をわかっていていつもそのような状況になるのならば、現在の症状は軽くとも、抗生剤を処方することに何をためらう必要があるでしょうか。
 またあるかたは、最初は軽いかぜ症状でもいつも長びいて気管支炎のようになって、咳と発熱をきたすといいます。そういうことがわかっておれば、事前の投薬の参考になりますし、予防的に対処することができます。

 中高年に全般的に共通するいくつかの「からだの癖」があります。そのひとつはいったん起こった症状が長引きやすいこと。例えば便秘となると、しばしば、便秘症状が続きます。それがちょっとした薬の過量投与で今度は下痢とか軟便に傾いたりします。かぜをひいたあとも微熱が続き、なかなかすっきりしない、小生のようにある季節にかかるかぜのときは咳がいつまでも止まらない、打ち身をするといつまでも打った箇所が痛むなどです。こうした場合に対処する心構えとしてあせらない、じっくり構えることが大切です。あせって、強い薬で急に症状をとっても、薬の副作用が出たり、薬による一時的な元気を完全な回復と錯覚してかえって再び悪化したりします。
 また特に心配しなければならないのは高年齢のかたで(あえて後期高齢者とはいいません)、些細と思われる症状がいつまでも続く場合です。例えば、からだがだるく微熱が続いているとき、高い熱ではないからと安心していると、胸部レントゲンをとってみると肺炎が見つかったりします。あるかたは今朝はちょっと胸が痛かったけどおさまった、時々あることなので心配ないといいます。が、念のため心電図検査をする立派な心筋梗塞が出現していたりします。すなわち中高年者では、症状が目立たない場合もあり、それが「からだの癖」と思っていると大事にいたることもあるので、十分の用心が必要と考えます。

 一般的には「癖」があらわれるのは飲みすぎ,食べすぎ,睡眠不足,天候変化の影響などでしょう。
 大概のひとはいつもの頭痛がおこったがこれは昨晩、飲みすぎたせいだろうとか、古傷のある右膝が痛むが天気が変る徴候かなどとほとんど、自動的には判断しているはずです。「癖」が症状として現れたときは,行動を自重するよいサイン(徴候)となります。
 「からだの癖」も有効に活用して、いつまでも元気に過ごしましょう。
(この項終わり、以下に続く)



共立荻野病院コラム一覧へ戻る