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2021年8月12日

中高年の健康戦略(40) 「まとめ(2)」富士通川崎病院 顧問 行山康

 ついにこの健康戦略シリーズも第40回となりました。ここで簡単にこれまでのことをまとめてみたいとと思います。
 まず、各回のタイトルは以下の通りでした。 
第1回から10回まで――老、病,死、歩く、食べる、眠る、暑さ寒さ、飲む、信ずる、性、
第11回から20回まで――不安、健康情報、自覚症状、排泄、別れ、感染、時間、頼る、思い、まとめ(途中下車)
第21回から30回まで――どちらを信ずるか(上、下)、違い、転倒防止、スピリチュアリティ(1,2,3)、変化と恒常性(1,2),老(2)
第31回から39回まで――転倒防止(2)、不安(2)、機能的障害、打たれ強く、育てる、からだのくせ、形と実、歩く(2)、物忘れ

 これらをまとめるのは大変そうです。中高年の健康戦略について様々な側面を勝手、気ままに書いてきたむくいかもしれません。
 KJ法という文化人類学者の川喜田二郎氏が考案した概念化の手法があります。タイトルを一枚一枚のカードにして内容が似たカード同士をまとめてゆきます。いくつかのカードの山ができます。KJ法では、それぞれに共通する考えを概念として発見、または把握してゆくのです。
 例えば「食べる」「眠る」「歩く」などは日常生活に関係するので「生活」という旗をたててまとめておきます。「感染」「転倒防止」「排泄」「機能的障害」などはからだに関連したことなので「からだ」としてまとめておきます。
 第8回目の「飲む」はアルコールの効用について書いています。飲酒による「喜び、快感」のようなことが健康に与える影響について述べており、「性」「育てる」などとともに「喜び」としてまとめましょう。
 「別れ」は年をとればそれだけ経験することが多い、近親者、知り合い、友達などとの永遠の別れの健康影響について書いています。また「時間」は若いときに比べれば当然短くなった残された時間をどのように意識して過ごしてゆけば、健康的かということについて述べています。「別れ」と「時間」は一見、結びつきにくいようにおもえます。親しいものが去ってひとり取り残されたような感覚とか、老い先少ない時間の意識などなどを乗り越えて「めげずに生きてゆく」というところに健康戦略としての共通点を見ることができます。

 そのようにグループ化し、グループ化したものをさらにまとめてゆきますと、詳細は略しますが、なんとふたつの考えにまとめることが出来ました。
 それは「生存」と「生きがい」ということです。すなわち中高年の健康戦略では「生存」と「生きがい」ということについて書いてきたことが判明しました。
 誰もが「生存」には限りがあることを理解しています。いつかは滅びのときを迎える。それは前もって経験できない不安であり、超え難い大きな淵です。そこで戦略が必要になります。
 「生存」に立ちはだかる「病」「死」について考えるのも健康戦略であれば、「歩く」「食べる」「眠る」「暑さ寒さ(への対処)」などで生活を整えて「生存」の不安を少しでも少なくしようとすることも、「生存」のグループにまとめる理由となります。
 一方、「生存」のことだけを突き詰めてゆくとチューブをいっぱいつながれて,呼吸しているだけの姿が目標となりかねません。これでは健康戦略を考える意味がないでしょう。
 健康には生存していることの「喜び、幸福、快感」というものも健康戦略として大事になってきます。これをまとめると「生きがい」ということになります。
 「別れ」と「時間」をまとめた「めげずに生きてゆく」はそのために「生きがい」が必要だという意味で「生きがい」に分類しました。「スピリチュアリティ」は「神仏を信仰するに似た深いおもい」で生きる支えとなると考えて、「生きがい」にまとめました。
 ここも詳しいことは省きますが、結局、中高年の健康戦略で書いてきたことは第20回の「まとめ」を除くと
 「生存」――病,死、歩く、食べる、眠る、暑さ寒さ、健康情報、自覚症状、排泄、感染、転倒防止、機能的障害、からだのくせ、変化と恒常性、形と実、物忘れ
 「生きがい」――飲む、信ずる、別れ、時間、頼る、性、思い、違い、スピリチュアリティ、育てる
 「生存」と「生きがい」の両方――老、不安、どちらを信じるか、打たれ強く

 のごとくグループ分けされました。もちろん「生存」「生きがい」に分類されたものが画然とわかれているわけでなく、それぞれの要素が多少なりとも含まれています。特に双方の要素を分離しがたく含んでいるタイトルに関しては両方という所に分類しました。

 中高年では分かり切った先が見えているのに、「永遠なる現在進行形として老いを生きる(黒井千秋氏)」ことになります。これは矛盾めいたもやもやしたものが意識の底にあることを示します。「生存」の危うさといってもいい。このもやもやした危うさに折り合いをつけ破綻を防ぎ、生存をささえているのが「生きがい」です。
 中高年の健康戦略として「生存」の種々相、「生きがい」の種々相について述べてきたことを納得いただけたでしょうか。
(この項終わり、以下に続く)

以下は第20回からの抜粋です。
「[健康]は医療よりはずっとひろい範囲の考え方で、いってみればひとの生き方に寄り添っています。したがって健康を語ることは人生を語ることにもなってしまいます。」

「健康は人生の諸事全般にからみついているので、なすこと考えることのすべてにわたって健康との関係を考えることができます。」

「医学医療というのは健康の一部しか扱っておりません。医学医療にたずさわっていないひとは健康については専門家に任せるといった態度になりがちですが、医学医療などは健康の一部しか扱っていないし、それぞれの専門家はさらにその狭い範囲しか知っておりません。あなたの健康はあなた自身が専門家なのです。いつのまにか戦略も身につけています。」



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