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2021年11月8日

中高年の健康戦略(45) 「健康評価」富士通クリニック 顧問 行山康

 健康診断については、これまで何回かふれてまいりました。企業体、自治体などが集団で健康診断を行うことは日本だけのことで、欧米先進国では一般的でないとか、健診結果はその時の健康状態を示すにすぎないので注意が必要だとか。
 今回は健康診断によって健康評価することの大切さについて述べてみたいとおもいます。
 外来診療をしていると、時に「私は何歳まで生きられるでしょうか」などと質問されることがあります。もちろん、質問した本人もはっきりした答えを期待しているわけではありません。また、糖尿病とか高血圧で通院している方から「何歳まで治療を続ける必要があるのでしょうか」と問われることもあります。こちらの質問はやや真剣にきかれることもあります。
 前のほうの質問には60代、70代の方には平均寿命までは問題ないですよと答え、平均寿命をこえているかたには最近は100歳以上のかたも年間3万人ほどもいるようだからそれまで頑張りましょうなどと答えます。多少の根拠もありますが、真剣な言葉のやりとりというわけでもありません。
 いつまで治療を続ければよいかという質問には正直いって、はっきりと答えられない場合が多いです。人それぞれに事情が異なり、人生観もちがいます。高血圧、高脂血症の治療をやめたからといって、翌日に脳卒中をおこすわけではないし、心臓発作など起こさずに自然と老いてゆくかもしれません。質問した当人としては、寿命というものがあるのだから、どこかからは治療をしようがしまいが変わりなくなるのではないか、それまでは通院するからその期限を決めてほしいという気持ちかもしれません。

 健康診断の結果によって年齢、血圧、コレステロールなどの検査データ、喫煙の有無などの指標をもとに、脳血管障害とか心血管障害にかかる確率を予測することが可能です。
 これを健康危険度評価(HRA)といっています。HRAは現在の健康状態から将来のある疾病にかかる確率をしめします。
 ソフトによって差異はありますが、高血圧、高脂血症、糖尿病の有無、肥満度、運動習慣の有無、食事習慣、飲酒、喫煙などから年齢別の脳卒中、心筋梗塞などに罹患する確率を示します。いつまで治療するかということを判断するうえに、多少の参考になるかもしれません。

 Aさん、62歳男性、血圧で50歳台より降圧剤を服用しています。健康診断では血圧がやや高めのほかは、血糖値正常、肝機能、脂質に異常なく、体重、63㎏で肥満度(BMI)も22.0と問題ありません。すなわち健康診断データの上からは大きな問題はありません。生活習慣では毎日2―3合の飲酒、喫煙歴30年毎日20本などが目だった所見です。

 Aさんは健康診断の検査データからはほとんど問題なしと判定されます。自動判定だけで結果を出すような健康診断システムをとっているところでは、高血圧症の治療継続を条件にほぼ問題なしという結果が返ってきます。Aさん自身も毎年、健康診断はこれでよし、ばっちりだとおもっています。ところで、仮にBさんというAさんと同年齢で、健康診断のデータはAさんとほぼ同じというかたがいたとします。AさんとBさんが異なっているのはBさんは喫煙しないということです。
 AさんもBさんも血圧の薬を毎日、きちんと服用して健康診断のデータは問題ありません。しかし喫煙するAさんはBさんよりHRAは全般に高くなります。肺がんによる死亡率はBさんに対してAさんは6倍、脳血管障害による死亡率は2倍高いのです。平均寿命(62歳での平均余命)は2-3歳の違いを生じます。
 62歳のAさんにもし何歳まで生きられますかと質問されたらたばこさえなければ普通にゆくはずだが・・と答えることになります。

 健康診断や人間ドックでは腹部超音波検査、胃内視鏡検査、大腸検査、脳MRI、腫瘍マーカー検査などチェックする項目が多くなる傾向があります。そうするとますます現在の体に関する情報は精密になります。しかし、精密になるにもかかわらず、現在という時点における体の状態を示すに過ぎないという本質はかわりません。そして異常がなければ安心します。今のペースで過ごしてゆけば問題ないとおもってしまいます。
 しかしAさんとBさんの違いにみられるように、普段の生活のデータを取り入れて、総合的に評価しないと安心するための健康診断になってしまいます。
 健康診断の結果は健康評価の一環として、今後どのように健康に留意してすごしてゆけばよいかの指針をあたえてくれるものとして活用すべきでしょう。
 健康診断の結果は睡眠時間、喫煙、飲酒、仕事の負荷、家族関係など生活に関することを勘案して判断されねばならず、それが総合的な健康評価として役立つものでなければなりません。残念ながら現状は医療の側にも受診する側にも健康評価に関する知識と経験が不足しています。
 それでも、今できることは健康診断結果をきっかけとして、健康にすごしてゆく上に何か欠けているものはないか、じっくりと考えることはできます。案外とその様に対処している方も多いでしょう。
 くれぐれも健康診断結果に問題がないからといって安心せず、より元気にすごしてゆくために生活習慣を見直すきっかけとするよう、お願いする次第です。
(この項終わり、次回に続く)



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