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2021年11月11日

中高年の健康戦略(46) 「生活習慣」富士通クリニック 顧問 行山康

 今回の標題を目にして、いまさら生活習慣とか生活習慣病はないだろう、それに類したことはさんざん聞かされているし、世間にもそれに関する情報は氾濫している、という気持ちになられるかたもおるでしょう。それでもこの方面で、2,3書き伝えたいことがあるので、あえて筆を起こしました
 生活習慣とは日々の暮らしの中で、きまっておこなうことです。喫煙、運動習慣、食習慣、飲酒、排泄、入浴、掃除、被服など生活全般が含まれます。さらに新聞、テレビ、ラヂヲ、読書、入浴、歯磨き、介護、趣味、ボランティア活動なども生活習慣に関連するでしょう。生活習慣は大なり小なり健康に関係しています。
 生活習慣病は日々に積み重ねられ生活する中に健康を障害する原因が潜んでいるという考えです。病気とは天から降ってきたり、人生につきがないからなるものでなく、毎日の過ごし方に健康にかかわる問題があるというのです。
 もともとは成人病と言い習わしていた高血圧症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、狭心症など、壮年期に発症する疾患群を、生活習慣の積み重ねがこうした疾患を招くということで行政で生活習慣病というようになりました。いわば官製の疾患名です。

 生活習慣病は生活時間の積み重ねで起こってくるわけですから、ある程度、年を経てしまった中高年では何も気にすることはないではないか、食事は自然と細くなってきていて、過食や肥満の心配はないし、酒量も自然と減ってきて若いころのように飲めない、タバコにしてもこの年まで吸っていてなにごともないのだから、これから禁煙して肺がんの予防を心がけても命の長さはかわらないのではないか、楽しみは捨てたくないよという声も聞こえてきそうです。
 すなわち、これまでは生活習慣にそれなりに気をつかってきたが、中高年にいたって、生活習慣はおさまるところにおさまっているので、これ以上は自然にしておればよいのではないか、特に生活習慣を見直す必要を認めないという意見です。
 また足腰を鍛えようと頑張れば、怪我のもとになるし、晩酌をやめたらささやかな楽しみもなくなってなんのために生きているかわからなくなるという方もおります。

 しかし、中高年では生活習慣など全く気にしないでよいかというと、そうとも言い切れません。命が果てるまで元気にというのが理想ですから、生活習慣をあるがままにして衰えてゆくのは避けたいです。
 まず第一にいわゆる生活習慣病の治療を受けている方では、その病気をすすめないように生活習慣に気を配る必要があります。
 最近、経験した63歳の男性は高血圧症と糖尿病で数年来、通院しております。血圧も血糖値も薬をきちんと服薬するおかげで基準値内におさまっているのですが、腎臓の状態がすこしずつ悪化、それなりにお忙しいかたで、薬をきちんと服むのが精いっぱいといっておりました。あるとき思い切って塩分を減らす食生活をしないと早晩、人工透析になるとお話しました。2か月後、クレアチニンという腎臓の働きを示す値が1.8から1.4にまで急に下がっていました。もともと、クレアチニンはいつ測定してもほぼ一定のものなので、これだけ劇的に改善したのはどういうわけかと問うたところ、徹底した塩分制限を心がけた、醤油、塩関係は一切使わず、アルコールもつまみがいるので極力、控えたそうです。ぜひともこのペースの食生活に慣れて続けてくださいと励ましました。
 生活習慣病の治療を受けていなくとも、この年代の誰もが暗黙のうちに健康上、不安におもっていることがあります。それは「寝たきり」になることおよび「ぼけ(認知症)」になることです。
 友人の奥さんは大変、生真面目なかたで、ぼけ防止には麻雀の様なゲーム性があって、人と交流を持ち続ける遊びが頭の刺激になってよいと聞くと、早速、麻雀教室にかよいはじめました。自分のように学生のころから麻雀に親しんでいたものからすると教室に通って学ぶということがどうも解せないことですが、その奥さんはポン、チーとロンをしばしば間違えながら、生真面目に頑張っておるようです。
  
 生活習慣を徹底的に整えれば「寝たきりとぼけ」は完全に、予防できるといわけではありません。しかし、少なくとも足腰の弱りは運動習慣を重ねることでそれなりに長引かせることは可能です。衰えにまかせるよりは、僅かな努力、わずかに苦しいおもいを日々重ねて、身体を起こした状態の生活を維持すべきでしょう。
 介護を要するような状態にならないためには、生活習慣の中で心と体をそれなりに鍛えることが基本となるでしょう。

 中高年とはいつ途切れるかもしれない細い道を歩いているようなものです。この道は必ず途絶えて無くなる道です。ところが実際はそういうことは自覚しない。広い道を堂々と歩いているとおもっているひともいる。細い道でいつ途切れると心配しているよりは、錯覚とわかっていても、それに身を任せていたほうが気分がよい。
 生活習慣を変える意識とは細い道を広げるような努力かもしれません。広い道を堂々と歩き続けて、ばったりと行き止りになる。行き止りまでは元気に歩き続けることを理想としたいとおもます。
 長年、医者をやってきた経験からすると、ひとりひとりの生活習慣を変えることは容易ではありません。これは自分を含めての話です。人には生活時間の流れというものがあって、そこに安住してイライラもなく周囲とも調和して過ごしているのです。それを日々に少しでも変えてゆこうというのは大変な努力が要ります。
 それでも、「寝たきりとぼけ」の予防を心に秘めて、広い道を歩いて日々に新たに、生活習慣の達人をめざしてゆきましょう。
(この項終わり、以下に続く)



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