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2022年2月5日

歌集 無形の重さ 波濤双書 眞崇華 風木舎


■Part3■


お供えだんご
桃の香りが漂いてくる幼児に顔寄せながら観ている満月
月見よりお供えだんごが気になりて幼児はつまむ兄の分まで
二歳児が顎をあげて満月に「おいでおいで」と手招きをする
映画化されし「火垂の墓」をひとり見て風化してゆく戦争想う
戦争文学時には読まん終戦後に誕生をせし私だから

日曜の午後
透明の魚が泳いで来るような雲一つ無き青空の奥
空を飛ぶ鳥達は皆知りいるや新しき年迎えしことを
初春の陽の色冴えて心まで塗り変えられぬ希望の色に
椿絵の湯呑み並べて友を待つ冬陽の下の日曜の午後
冬空の真綿色した雲の群れくま・さる・きりんかけっこしている
何処からか水仙の香が漂いて人知れず咲く根強さ想う
寒き中背筋伸ばして咲く水仙何を語るや見入る私に

戸惑いながら
デートスポットであるかも知れぬ裸木の枝に寄り添う鳥たちを観て
春風に撫でられ新芽伸びてゆく幼児が言葉覚えるように
長き眠りを打ち破られしお雛様 戸惑いながら飾られている
贈られし雛人形を覗き込む幼児の瞳にぼんぼり揺れる
わが視界閉ざす險の裏側に亡き父母映るスクリーンがある
「稔る程頭を垂れる…」と亡き父の口癖今も耳元に聴く
去年の風に運ばれて咲きしタンポポの直立の茎 自信に満ちて
意志持たぬものは全てを宿命と諦めおらん 例えばコップ

戦後の平和
亡き父母の墓石に白き鳥の羽われに代りて遊びに来しや
母の日に供えし白きカーネーション淡き香りが墓石を包む
梅雨入りを待たず出て来し蝸牛乾きし触角保ちあぐねいる
梅雨のなか涼しげ求め軒下に南部風鈴吊して眺む
暑いなか和服を召した女性が行く爽やかな風周りに残し
『きけわだつみのこえ』を繙く夏がきぬ学徒で逝きし伯父を偲びて
騎馬戦の動きの鈍き学童に戦後の平和が見え隠れする
忙しげに雀の突く水溜まり小さき波紋が次つぎと湧く

真つ赤なビーズ
休日の工事現場は眠りいてしおからとんぼが秋風に舞う
水溜まりは寂しき雨の集会所からだ寄せ合い気化の日を待つ
縦糸と横糸で織るわが一生時には刺さん真つ赤なビーズを
枯れ木にも奇跡の新芽が吹くならん念力込めて水やりており
カールせしオシャレな枯れ葉が秋風に誘われワルツを踊っているよ
朽ち果てし懐かしの家秋草に覆われ友はいずこに住むや
舌の上に泡雪のように溶けてゆく赤ちゃんせんべいが優しさ残す
雀たちが頭振りつつ木の枝で飛び立つ前の羽繕いする
人は皆時間の列車に乗せられて幻の駅へ向かって走る
耳を澄ませど音は聞こえず確実に時間が生命を削りているよ


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