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2022年3月4日

歌集 無形の重さ 波濤双書 眞崇華 風木舎


■Part5■


歩み続ける
言の葉は拾えなかったりひろえたり形無きまま浮遊している
街路樹の落ち葉が枯らびた音たてて行き交う人に「御機嫌よう」と
人は皆不平等の下に生まれ来てそれぞれの道を歩み続ける
“不平等”に生まれし後のわれの原石 意識を持ちて磨き続けん
正解も不正解も無き人生の選びし道に花を咲かせん
一瞬に人・家・車飲み込みし津波の罰を誰が与えしや
われを基に自由に枝を伸ばしつつ幾何学模様の人生描く
雨上がりの草引けば根は意志持たずあきらめ顔で身を任せいる

シャボン玉吹く
整地されし空き地に芽吹く荒草の葉先が揺るる光を受けて
週末の疲れし心癒したく幼児と並びシャボン玉吹く
不慮の死で逝きたる友のアドレスを笑顔と共に消さずに残す
うつ病の友の選びし道なれど未だに「なぜ」と問い続けいる
突然に母を亡くせし遺児ふたりいかなる暮らしを続けていくや
穏やかな風に起こされ木蓮の白き花びらあくびしている
向日葵の驚くような伸びかたに夏を待ちいし喜びを観る
太陽は「また明日たね」と沈みつつ名残惜しげに夕焼け残す
夏の香をたっぷり含みし麻のれん押し洗いして冬眠させる
春を待つ梢凜凜しき裸木に緑の衣を着せてあげたい

ゆるり歩まん
雨の中遠出楽しむ蝸牛背に思い出結め込みながら
隣家へと社交上手なつるバラが甘き香りをそっと届ける
蔓草が伸びゆく先を不安げに地上の感触確かめている
萎れゆく植物達の謙虚さよ次世代にそっと生命託して
巡りくる誕生日には決めしこと続けてゆかん「ユニセフ寄金」
公の基準以外はわれだけの物指し持ちてゆるり歩まん
どこからか雑草のように生まれくる雑事摘みつつ日を重ねゆく

雨粒ぽたり
うろこ・さば・いわし雲などの雲バージョン地上に秋の到来知らす
触れる度恥ずかしそうに散る萩の小花が萎んで地上で眠る
野分後の蔓草長く伸びきって疲れたように転た寝をする
古本に書かれしメモの筆跡に無縁の先の読み人想う
大和路のまほろば求め持ち歩くガイドブックに雨粒ぽたり
バス停に置かれしベンチ陽を受けて気怠き人等のオアシスとなる
訪れし暝想室で向かい合う心に潜む見えぬ私と
またしても衝動買いせし腕時計嘲るように笑う秒針

わたしは揺れる
初めての幼児の書きしおてがみを勘を頼りに読み解きてゆく
幼児の本能のまま描きゆく迷わぬ線にみる青信号
揉み解ぐす酸漿の種が指先でビーズのように光り輝く
平等の時間の流れを意識して歩みて行かんジグザグな道
言の葉の背中合わせに潜みいる心模様を透かしてみたい
にこやかな友の笑顔のその下に隠されている何かを想う
進みゆく病の友を見舞つ時わたしは揺れる言葉選びに
拠り処が無いと囁く友の背に天使の羽をそっと付けたい


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