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2022年3月28日

歌集 無形の重さ 波濤双書 眞崇華 風木舎


■Part7■


漂いている
寂しさは何処から湧いてくるのかと心の内を掘り下げている
雨音の隙間に君の足音を捉えんとして耳そばだてる
うなだれし真つ赤なカンナが秋風に労わられながら萎れてゆくよ
陽を浴びた売地の中で野良猫が自分の部屋のように寛ぐ
こんなにも静かな時間が流れ行く我の心を置き去りにして
紫色のシクラメン持ち施設へと勇んで行きぬ月曜の午後
施設での友は只々寡黙にて独りの時間に漂いている
人生の折々に見る人格がその女だけの生き方語る
病人の治療尽きても生かそうと点滴の管光り続ける
二週間の入院の後逝きし友私のピンクのマフラー巻きて

確かさ搜す
自由時間をひとりで過ごす足跡に実物大の私が残る
窮極の幸せは何と自己に問う父母から貰いし生命ある事
病床で写経続けいし亡き母は死への恐怖を鎮めていしや
今もなお写経の手本や墨と筆 主の居ない小部屋に眠る
気が付けば太陽の位置二十度も傾いていた詩集閉じれば
それぞれの花に付けられし花ことば花言葉辞典を繙きてみん
擦れ違いし女性の残り香コロンの香風と仲良く何処に消える
もみじ葉と競い合うように銀杏の葉今が盛りの絵画の世界
バナナだと幼児が指をさす空に色鮮やかな三日月懸かる
甲子園を夢見て素振りする孫の右掌の血豆が固い
外孫のDVDを眺めつつDNAの確かさ捜す

自動仕掛けで
何処より人等が出で来る御堂筋蟻の如くにビルへと急ぐ
瞬間に今が過去へと早替わり自動仕掛けで時間は流れる
強風に立ち向かおうと空見れば隊商のような雲流れ行く
海風に舞える地蔵の涎掛け夕陽を受けてほんのり赤し
波高き海の奥底に波立たぬ静かなオアシスあるやも知れぬ
寒風に晒されながら水仙は凜々しき姿で甘き香放つ
時として修正効かぬ思い出も見方変えれば輝きている
雨粒は不規則な音刻みつつ雨のタンゴを忙しく唄う
暖かき陽を浴びながら新芽たちわれが先よと競いて伸びる
生きていることの幸せ抱きつつ確かな明日に会うため眠る

導かれゆく
群青いろの空に輝く一番星 先陣きって瞬いている
タンポポのたくさんの種子それぞれに綿毛の翼持ちて旅立つ
春祭りを知らす花火の渋き音 離れし町の歴史を思う
こいのぼりは父子の序列決まりいて五月の風に身をゆだねいる
新たなる生きがい求め点訳の知らない世界に一歩踏み出す
カチカチと点字書く音心地好く無になる世界へ導かれゆく
流れゆく時間の一部を何らかの形に変えて生きがいとせん
自由なる時間を使い根の張りしわれだけの花咲かせてみたい

忘れないで
ことしまた形見となりし日傘さし友の笑顔をみ空に探す
ドクダミを引きし指先いつ迄も「忘れないで」と香りが消えず
ドクダミと呼ばれながらも楚楚として白き十字が青空あおぐ
草叢となりいる田圃を眺めつつ稲穂ゆれいし昔日思う
蜜柑畑の跡地は何になりゆくや土地は黙して成行き任せ
歴史ある地元の祭り「羽田祭り」手筒花火が夜空を染める
降り注ぐ火柱・火の粉あびながら氏子ら祈る五穀豊穰
裏庭に咲きし小菊を手折り持ち父母の墓前へ秋の香運ぶ
忙しげに熟したる柿突きいる掠鳥一羽スイングしつつ
道端のはびこる雑草その場所で自然に生命の枯れるを待てり


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