2022年5月1日
歌集 無形の重さ 波濤双書 眞崇華 風木舎
■Part9■
群れずして
雑草と言えども名前があるように個性大事と生き生き伸びる
渋滞も信号待ちもなき空を雲は流れる風に吹かれて
「さよなら」の言葉を秘めて変りゆく二度とは逢えぬ万華鏡の景
群れずして飛び行く鳥の行く先に秘密の隠れ処あるやも知れぬ
輪切りした蜜柑を啄む掠鳥に冬の陽射しがふんわり包む
亡き母の形見となりしワンピース敢えて取り出し元旦に着る
「目標を持って生きなさい」亡き母の今際のことばが今も聞こえる
空白な時間が静かに消えてゆくそれも私の分身である
尊厳死の重きテーマの映画観つ尊厳の意義しばし摸索す
自己主張するかのように冬の風音荒立てて雨戸を揺らす
指先想う
わが書きし点訳本が読まれおり見知らぬ人の指先想う
化粧品の箱に点字が書かれいてメーカー側の福祉度を知る
缶ビールの「おさけ」の点字に触れる時更なる点字の広がり願う
白杖を突きつつ歩み行く男の背中に自立の文字が踊れり
障害のもたらす不便を然りげなく支える人達増えたらいハと
仲間達と落葉踏みつつ山頂へ 遠くに白き富士山を見る
一億年以上も経ちし「光岩」ジュラ紀の岩石両手で撫でぬ
光岩の無言で放つ光沢に記念物なる誇りを感ず
放つ白糸
能面に心託して舞うシテの白足袋の先篝火に映ゆ
篝火を透かして眺める「土蜘蛛」の放つ白糸幽かに流る
亡き人を偲びいる時ふと思う私の横に来ているのだと
精神性の高き生き方する人の心に宿りいるものは 何
わたくしの朧な心人知れず何で満たさん何に委ねん
駅前にて聖書の冊子を配る娘の真白き帽子に夏の陽及ぶ
路の上に撒かれしパン屑鳩達は黙々食べる快適テンポで
体力と気力のバランス取りながら人生の河流れて行かん
共に生きる
八月は南無阿弥陀仏の掛軸に替えて盆待つちちはは思び
長き髪ひとつに束ねこの夏を如何に越さんと大空眺む
歩み行く森林のなか薄日差し朧に苔が眠りを醒ます
確かなる今のこの時何をせん優先順位のーから着手
何をするにも虚しさだけが留まりて鈍色をした刻が過ぎゆく
何ごとも挑戦をする生き方に長寿の秘訣あるやも知れぬ
亡き母の歳を越したるその日より母の知らない歳 共に生きる
亡き母の影響力は大きくて教えが今も頭をよぎる
普段より長めのローソク灯す中墓前でゆるりと母の命日
他人様の事も思える生き方を出来たらいいと残りの人生