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2022年5月13日

歌集 無形の重さ 波濤双書 眞崇華 風木舎


■Part10■完


夢描きつつ
言の葉は多くの意味をもちいても使わなければ忘れられゆく
鈴生りの風船かずら秋風に揺れつつ遺す次世代の種
振り袖草・尾花の名前もつススキ孤独を嫌い群れて生えいる
可憐なる小花付けいる露草を雑草と呼び引くは哀れに
根上がりし松の支根を踏みながら人のまばらな緑地に憩う
革命の言葉が今はお気に入り夢を描きて現伏说皮
吹き溜まりの落葉色した樹々の葉は朽ちゆくことを怖がりもせず

薄れゆく像
五十年も前に学びし校内を友と散策タンポポ二輪
朧なる気持をスカットしてみたく歩調のテンポ アレグレッドに
風の止むチャンスっかんで木々の葉は急いで眠る黄金の時間
遙かなる山里偲びて閉じし眼に時折顕ちぬ軋めく水車
この橋を渡ればあるね友の家ありても会えぬ今は亡き人
寝る前に開きし本から聞こえくるお休みコールでその日を終える
亡き母よなぜ会えぬかと床に入り薄れゆく像追いつつ眠る

心が揺れる
離れいる友達からの便りには見知らぬ街の風潜みいる
友ゆえに程よき距離を置きながら友との年輪増やしてゆこう
主役にはなれないことを知りいても雑草は生きる堂々と生きる
ドクダミに「今日の主役はあなたよ」とそつと手折りて花瓶の中へ
文字の無き絵本に添える物語読むたびわれの言葉増えゆく
懐かしき友への手紙が戻りきて「宛名不在」に心が揺れる
浴衣姿の幼児を見れば聞こえくる遥かな過去の行水の音
巡り来る「母の命日」回重ね寂しさよりもなぜか嬉しい

鳥も友達
雲たちは時には雨や雪となり巡りて雲になるときはいっ
ろう者なる店主と交わす筆談に会話以上の親しみ感ず
平等な二十四時間を人は皆自分好みの色で塗りゆく
八時十五分テレビに映る式典の鐘を聞きつつ私も黙禱
鳴き渡る鳥の鳴き声翻訳機あったらいいな鳥も友達に
草むらに置き去りのままの自転車の破れしサドルがなぜか寂しい
生きている今の瞬間大切に積み重ねゆく生き方したい
耳飾りを付けし土偶の乙女像時代は変れど変らぬオシャレ

心に留む
消しゴムの消し屑の中にもの言わぬ消されし仲間が悷じれて眠る
間違いを身を磨り減らし消してゆく消しゴムに見る母の憂しさ
遠き日に確かにありき消しゴムの消し屑の長さを競いし日々が
満たされぬ心は重く満たされし心は軽い無形の重さ
六十三円の切手貼られて絵葉書は無防備のまま旅立ちて行く
過ぎ去りし時間は全てを思い出に色付けされて、いに留む
姿無き風は何かに当たりつ つ存在感を示して通過
突然の音は不思議と意味をもちことば以上の言葉となりぬ
幻のバトンを渡してゆくように季節は変わる春・夏・秋・冬



あとがき
今日ここに第一歌集「無形の重さ」を上梓出来ましたことを、嬉しく思います。
歌集名の「無形の重さ」は、160頁記載の
満たされぬ心は重く満たされし心は軽い無形の重さ
から取りました。日常の中、形の無いものに心惹かれることが多くあります。 例えば時間・音・風・亡き人達のことなど…
この歌集は、波濤短歌会に入会してから平成の終り迄のものをまとめたものです。手探りで過ごした日々の歌でお恥ずかしいものですが、令和の年号と共に心新たなスター卜をしてみたく、一冊の歌集にしてみました。
短歌の世界へお誘い下さり、ご指導を仰いでいる鈴木鶴江先生に感謝を申し上げます。
歌集上梓に到る迄の多大なお時間やご助力、ご尽力を賜りました波濤短歌会の中島やよひ様、風木舎の今泉洋子様、加藤眞喜子様に、心よりお礼と感謝を申し上げます。
令和2年5月26日 眞崇 華

眞崇 華 (まだかはな) プロフィール
1946(昭和21年)愛知県豊橋市に生まれる
1967(昭和42年)愛知大学女子短期大学部文科を卒業
1978(昭和53年)マリンバ教室を開室
1978(昭和53年)第1回「藤城佐知子のマリンバを聽く」を開催
1982(昭和57年)第2回「藤城佐知子のマリンバを聴く」を開催
1989(平成元年)藤の城画廊を開廊
2005(平成17年)波濤短歌会に人会
2020(令和2年)現在はマリンバ指導、ボランティア活動等をしながら、短歌を楽しんでいる。

歌集 無形の重さ 波濤双書
2020年6月19日発行
著者 眞崇 華
〒441-8019 愛知県豊橋市花田町字百北218 藤城方
発行所 風木舎
〒113-0033 東京都文京区本郷1-27-8-1007
印刷 ㈱キャッブス
製本 新里製本所
定価2500円+税


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